半年ぶりのナンパにて
某日
街で1時間ほど時間が出来たため、久々にナンパをしてみようと思った。
歩をゆるめ、待ちゆく人を眺める。
ナンパをするのは久しぶりだ。
何となくここ半年、やりたくなくて避けていた。
幾人もの女の子たちが、通り過ぎていく。
そして、ある子が目に入る。
しかし、声をかけようとするも、
体が動かない。
地蔵だ。
懐かしいこの感じ。
心臓がドキドキして口から飛び出そうになる。
そしてそれと同時に、
どうせ相手にされない。今日の俺はブサイクだ。今日は調子が悪い。あの子はタイプじゃない。歩くのが速いからダメだ。周りに人が多いからダメだ。無理に声をかける必要はない。と、
言い訳と自己否定の感情が洪水のように溢れ出てくる。
自分という存在が、街に圧倒されてしまう。
そして、そんなちっぽけな自分を守るため、目線が自分にしかいかなくなる。
この感覚は何度味わっても嫌だ。
結局、1時間街を歩いただけで声をかけられず、用事先へと向かった。
ナンパをしに初めて街に出た日を思い出す。
でも、あの時と違って、今は地蔵を抜け出す方法を知っている。
翌日にリベンジすることを誓った。
翌日
髪をセットし、香水を少し振りかけ、家を出る。
電車に乗って、今日は声をかけるという決意を自分に言い聞かせる。
昨日のリベンジだ。
メンタルを整えているので、地蔵はしないだろう。
声かけをするまでのイメージも出来ている。
女の子を追いかけて、こんばんはと言えばいいだけの話だ。
街に降り立ち、地下街を歩く。
心がざわめきたつ。地蔵しそうになる。
目の前から、茶髪の女の子が歩いてくる。
すれ違う。体を反転させる。追いかける。
横並びになる。そのまま、一歩前へ出て、振り向く。
「あの、すみません」
ふっと目線を上げ、こっちを見てくる。
「落としものしちゃって」
「出会い落としちゃったんですけど」
何も考えずに行ったら、とっさに出てきたのがこのセリフだった。
もう体に染み付いてしまってるのかもしれない。
女の子が、クスクスを笑う。
オープンした。
花見の帰りで、暇そうだった。
カフェに誘うと、すんなりついてきた。
年上で、落ち着いていて、何となくナンパ慣れしてそうだった。
カフェでお茶を飲み、適当に話す。
あまり深く考えず、自分が話したい話をした。
というより、技術うんぬんでトークをするのが嫌になっていた。
何となく食いつきを感じる。
「年上しか考えて無かったけど、年下もいいかもね」
という会話が出来てきたところで、
サインが出ていると判断して、カフェを出た。
カフェを出て、歩きながら手を差し出す。
相手が戸惑いながら握ってくる。
正直、今日こうなることは予想外だったが、今日逃さない方がいいと判断して、家に誘う。
「俺が経営してる超隠れ場的バー行かない?まあ俺がバーテンダーやってるんだけど」
戸惑う相手をよそに、駅へと向かう。
ちゃんと、ついてくる。
駅へと向かいながら、ミスに気づく。
いつもの癖で駅に向かっているけれど、ここは電車じゃなくてタクシーだ。
地上に出て、タクシーに乗った。
久しぶりすぎて、会話がもたない。空回りしそうになる。
ただ、もう変に難しいことを考えて、気を張るのはしたくなかった。
正直に、「久しぶりで緊張している」と伝えた。
もう、それでいいと思った。
家についてからも、今までのようなトークやギラつきをなるべく忘れるようにした。
あんまり考えなくても、スキンシップにグダはなかった。
正直に、抱きたいという自分の気持ちを伝えた。
グダがあった。
話を聞くと、生理であるようだった。
どうしようか迷ったが、過去の経験からいって、生理でも突っ走ってしまったほうがいいと判断した。
変にギラつかずに、スキンシップを繰り返した。
次第に、相手がその気になっていった。
一緒にシャワーを浴びた。
後はもう流れるようにベッドに入った。
一声かけ目で、連れ出して、そのままゴールしたのは初めてだった。
しかもそれが、半年ぶりのナンパだったことも驚きだ。
やっぱり、声をかけると、何が起こるか分からない。